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ぞうブロ

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ヤクザ、DQN、上司に囲まれた設計者を救った、お気楽爺さんの言葉。

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ここ一週間、まともにブログを見れてなかった。

飽きたからでも、愛人ができたわけでもない。
設計者にとってはこの上なく恐ろしい悪魔の儀式、プレ量産立会いだったのだ。

 

私はとあるメーカーで働く、農業機械の設計者だ。構成部品が3000点ほど、売価500万ほど、パワーは70馬力ほどのマシンの設計主任をしている。
主任と言っても、部下はいつも寝てる爺さんだけだ。
私自身は、能力や人望もなければ、ノウハウや経験もない。
 
そんな私が最も恐れていたイベント。
それは、地獄の量産図面出図でもなく、鬼の報告会でもなく、プレ量産ラインでの立会いだった。
 
設計者が、工場で自分が生み出した製品ができていくのを、感慨深く見守る。
よし。全ては私の計算通りだ。完璧だ。
ラインの作業員たちが、満面の笑みで言う。
「ありがとうございます!こんな素晴らしい製品を作って下さって!私たちも鼻が高いです!」
会社からは売上に貢献したとお褒めの言葉を頂く。
目の前には出世街道という栄光のレールが敷かれている。
工場の可愛い女の子は、私に恋をする。しかし、想いを伝えることができずにいる。
そんな彼女に私はそっと近づき、笑顔で握手を求める。
「ありがとう。でも私には、愛する妻がいるんだ。だから気持ちだけで嬉しいよ。もしくは側室か愛人になるかい?小遣い制だから、お金はないけどね。大切なのは愛だよね...」
 
妄想はかくも甘く雑で、現実はかくも苦い。
プレ量産ラインの立会いは、そんな華やかなお披露目会ではない。
そもそも農業機械の工場に、女の子なんてそういない。
大半がヤクザのようないかつい男たちだ。
正真正銘の、公開処刑だ。
工場のいかついおじさんたちに囲まれる。
インテリヤクザにも囲まれる。
 
おい!部品がリストにないぞ!
おい!部品が組めないぞ!
この図面の公差計算おかしくないですか?
どうなってるんだよ、設計コラァ!!
はい!はい!すいません!
 
半数以上がライン側の間違いだったりするのだが、
そんなの指摘できない。
「俺らが間違えやすいもん作るお前らが悪いんだろうが!」
あっはい、すいません!
 
いつまでに対応する?暫定案は?恒久案は?
コストは?品質は?納期は?関連部門との調整は?いつまでに設計変更書く?
はい、すぐやります!
 
もはや、米つきバッタだ。 心を無にするのだ。
菩薩じゃない、怒りも悲しみも超越した、如来の境地なのだ。
 
設計は主担当の私と、一応アシスタントの爺さん。
助けを求めようと爺さんを探すも、いない。どうやら、昔の同期と、工場を散歩しているようだ
 
普段私に無茶苦茶な要求をしてくるDQN評価部門の人間も数人一緒だった。
しかし、彼らは貝のごとく、一様に押し黙る。まるで葬式だ。
ただし、私を見る目は、はっきりこう言っている。
「主担当でしょ、なんとかしてください、頼むから俺たちに振らないで」
君たち、普段の元気はどこに行ったんだい?
中には味方なのに牙を剥く奴もいる。
でしょ?だから私あの時言ったんだよねと。
戦う相手は、敵だけでなく、身内にもいるのだ。
 
爺さんから電話だ。
「今、どこにいます?」
それは、完全に私の台詞だ。
 
このクソ忙しいときに、上司から電話だ。
でも、きっと救いの手を差し伸べてくれるんだろう。
彼は機械的な口調で言った。
「立会いで忙しいところ、本当に申し訳ないんだけど、この前話したあれとあれとあれ、今資料送ってくれないかな?
大変だろうから、すぐじゃなくてもいいからね、5分後また電話します
「あ、あのー、こっちは色々大変で、、」
「プチッ、ツーツーツー」
 
ついにやっと、爺さんが散歩から帰ってきた。
「おっ?なんか問題発生したの?
ねえねえ、何がどうなったの?簡単に教えて?」
 
皆に告ぐ。いくら蛇口を強く捻ろうとも、水が出るのは1つしかないのだ。
もう1つ。爺さん。評価部門の面々。そして上司。
あんたがたも本来、私と同じ、水を出す蛇口側のはずだ。
 
「なぜまだできてないの?」という上司の無茶振りに耐えきれず、生産ライン立会いを中座して事務所のパソコンを借り、作業。
爺さんは横で、新聞を読みながら、ああすればこうすればと、的外れなことばかり言う。
ラインが気になるが、作業に集中。
爺さんは言った。
ライン立会いなんて、設計は見なくてもいいよと。
よし、やっと片付けた。
間も無く、ラインの管理者から電話。
「なんで立ち会ってないんだ!お前何しに来たんだ!」
 
ライン対応。上司対応。爺さんのおもり。
怒涛の一週間が終わった。
問題が起こりつつも、なんとか乗り切った。
上司に電話で報告した。
「お疲れ様です。こうでこうで、なんとか無事終わりました」
「おっ、お疲れ様!忙しい中、資料もありがとう。
でも、こことこことこことここを明日までに修正してね。
それから、〇〇さん(爺さん)、役に立ったでしょ?
〇〇さん、現場に顔がきくから、きっと仕事も円滑になると思って、俺が追加で応援申請しといたんだよね!」
「・・・ありがとうございます。色々助かりました」
 
よし、家に帰ろう。明日は休日出勤で、まとめと今後の対応日程を作るぞ。
 
評価部門DQNたちは、知らん間に帰った。
明日は休みなので、皆で東京を満喫するそうだ。
 
久々の東京の余韻に浸る間も無く、超満員の新幹線の自由席で、冷たい駅弁とプレモルで1人乾杯。
自由席で無表情で立ってるこのサラリーマンたちも、きっと戦いから帰るところなのだろう。
そんな中、同じく知らん間に早退した爺さんから、メールが届いた。
「お疲れ様でした。大変でしたでしょう。あなたと一緒に出張して、仕事ができて、本当によかったですよ」
 
今のボロボロの私には、あのふざけたクソジジイの言葉ですらも、心のオアシスだ。
お疲れ様、爺さん。DQN評価部門の方々。上司。そしてラインの人たち。
 
物は考えようだ。
俺がいないと、この製品は量産させられないんだ。
俺みたいな人間でも、必要とされているんだ。
俺は、まだまだ頑張るよ。
無事量産品を立ち上げ、燃え尽きる日まで。
 
そう思いながら、私はそっと転職サイトを立ち上げ、目ぼしいオファーがないか、チェックし始めた。
 
(※この記事は、ほろ酔い気分の勢いだけで、新幹線の中で書かれたものである)

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