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ぞうブロ

旅行、音楽、スポーツから、転職、エンジニアの叫びまで。

昇格したのに大ピンチ。それでもサラリーマンエンジニアが戦う理由。

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先日、昇格した。

月収が、数万円上がる。

私の小遣いは1円たりとも変わらないが、嫁さんは大喜びだ。

いつになく、尊敬の眼差しで、私に接してくれる。

少し前、会社の保険の還付金15000円をネコババしようとしたのがバレたときの、

氷のような眼差しとは、雲泥の差だ。

それが嬉しい。 

 

転職してきて早5年目。

石の上にも3年というが、燃え盛る鉄板に放り上げられ踊り始めてから、早5年目になる。

たった5年ともいうが、我ながらよく燃え尽きずに頑張ってきたものだ。

異業種からの転職だったが、地元に近い勤務地と、アップする給料につられて、やってきた。

入社後に、未経験で意味不明な機械設計の仕事をすると知らされた。

でも即戦力とされ、使えない奴だと陰口を叩かれもした。

プロ野球でFA宣言して某巨人に行くも、思うように活躍できない選手たちのニュースを目にするたび、他人事とは思えなかった。

でも、まだ同じ野球なだけ、いいじゃないか。

「ピッチャーのつもりで入団したのに、FWとして今すぐゴールを決めてこい」と言われたようなもんだ。

 

前の同僚には、そんな苦境を、口が裂けても言えなかった。

「転職は失敗だったな」「残った方がよかったのに。」そう思われるわけにはいかなかったからだ。 

 

神様すみません。金と場所に釣られた私がバカでした。 

多少、給料が下がってもいいから、もう少し精神的に楽な仕事がいい。

責任の大きな仕事なんてしたくない。

そんな、後ろ向きで、見苦しい言い訳ばかりの、小さな男だった。

 

そもそも、そんな虫のいい話があるわけない。 

大体、中途採用をしてる会社なんて、何らかの事情で人が足りないのだから、忙しくないわけがないのだ。

まして金で釣る会社なんて、激務かブラックに決まってる。

転職を繰り返せば、どんどん条件は悪くなっていくだろう。

しかし、このまま座して死を待つわけには。

 

そんなある日。

上司と二人で図面を囲んで、打合せしてたときのこと。

「zohbey君、いい知らせがあるよ」

「どうしましたか?私が出した不具合が解決したんですか?」

「来年1月から、君は昇格だ。おめでとう」

ある製品の主担当だが毎日悪戦苦闘していた私なので、

一瞬、意味が分からず、フリーズした。

咄嗟に出た言葉は「申し訳ありません」だった。

「いいよ。会社が君を評価してくれたんだ。これからも頑張ろう」

私は全身がぶわっと熱くなるのを感じた。

少しだけど、あの激務の辛い日々が報われたんだ。見てくれている人はいた。

そう思うと、正直、涙がこぼれそうだった。

 

社会人にとって、評価されて年収が上がることが、これほど大きなこととは。

なにより、気分がガラッと変わった。

完全に自信喪失になっていた私に、いくばくかの自信を与えてくれた。

そして、実際に給料が上がると知り、全ての負の記憶が吹き飛んだ。

ブラック会社とか転職失敗とか言って、本当にすみませんでした。 

 

お金も嬉しかったが、一番は、やはり会社や上司が評価してくれた、ということだ。

頑張りや努力は、自分ではなく、他人が評価するものだから。

サラリーマンエンジニアの心は、少しの給料アップと、いくつかの甘い言葉で、いとも簡単に買えてしまうのだ。

 

転職し今の会社を選んだ私の英断は、間違ってなかったんだ。

2度目の転職をしようとしてたことは、完璧に忘れた。

よし、これからもこの会社で、粉骨砕身、全身全霊頑張ろう!

そう思えた。そのときは。

翌日。

いつも通りの、静かで機械臭く、女っけのない刑務所のような職場。

いつもと変わらない、理不尽な激務。

でも、いつもと違って、ちょっと輝いて見える。

 

そんな中、新たな問題が発生した。

しかも、開発品の量産を遅らせなければならないほどの、大問題だ。

私も開発チームも、全員が気づけなかった、新しく難しい問題。

でも、失敗は失敗だ。

不完全な製品を世に出すわけにはいかない。

 

メーカーで、担当製品の量産が不具合により遅れることが、どれほどのことか。

その設計の主担当が、どれほどの負荷と責任を負うことになるのか。

巻き返し品の設計検討。試作テスト。工場調達営業販社との折衝。役員幹部への報告。浴びせられる罵声。詰問。尋問。拷問。そして無慈悲な粛清。

考えただけで、ゾッとする。

 

昨日の清々しい気持ちは、年末年始の休みとともに、綺麗さっぱり吹き飛んだ。

なるほど、給料が上がり昇格した分、負荷も責任も倍増するというわけか。

 

私はふと、彼の顔を思い出した。

前日、昇格を笑顔で知らせてくれた、上司だ。

まさか、この大事件を知ってて、責任を取らせるために、俺を昇格させたわけじゃないだろうな。

いや、そんなことはない。彼が私を評価し昇格させてくれたんだ。感謝でいっぱいだ。

 

日程をひくと、仕事のピークは今月末。

ちょうど、初めての子供の出産と重なる。

立ち会いは、許されるのだろうか。

 

会社で私の代わりは、いくらでもいるが、家で私の代わりはいない。

そう思ったが、例の上司。昼寝爺さん。不思議図面生産マン。

だめだ。私しかいない。

 

なぜ大変な時に限って、色々な問題が起こるのだろう。

人生って得てして、そんなものですよね。

 

私は腹をくくった。

これは試練だ。

一人前のサラリーマンエンジニア、そして父親になる資格があるかを、

神様仏様お客様社長様から問われているのだ。 

 

やっぱり、前の職場よりしんどくなってるやん。やっぱ辞めたい。

何が昇格だ馬鹿野郎。

今度こそ楽なところに転職してやる。

大体、俺は端金に釣られるような小さな男じゃないんだ

負のスパイラルに引き戻されそうになった。 

それでも私は闘う。

でも、今の私は、一人ではない。

出産を控えた嫁さん。まだ見ぬ子ども。尊敬する上司。愛すべき部下たち。

そう思うと、少し気持ちに余裕ができた。なるほどこれが1UPか。

この苦境に耐え、頑張っていれば、男としてステップアップできるだろう。

それにまた、昇格できるかもしれない。

給料アップというニンジンをぶら下げられ、私は今日も馬車馬のごとく奔走する。

サラリーマンエンジニアとは、たった1個のささやかな餌で、999個の辛い苦しみに耐えることのできる、頑丈で哀れな生き物なのだ。

 

さあ。明日も激務が待っている。

頑張っていこう。

めっきり寒くなった早朝。

私は涙を拭い、チャリに飛び乗った。

戦場に向かって、今日もまた、走り出した。

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