ページ コンテンツ

ぞうブロ

サラリーマンエンジニア象の、本格エッセイという名の妄想寝言ブログ。

夢のマイホームを建てました。

スポンサードリンク

家を建てました。注文住宅の新築一戸建て。夢のマイホーム。

夢とは家族の夢、嫁さん子供の夢。莫大なローン。私の銭闘力は5300万です。そう土地屋とハウスメーカーに宣告されたばかりか、生命保険を増額され、なけなしの小遣いを無慈悲に減らされる。何が夢だ希望だ。大体新居にいられるのは夜と週末だけ。これ以上高い買い物は、今後の人生の中ではおそらくない。俺が次に主役になれるのは、きっと自分の葬式だろう。やるべきことは、終わってしまった。あとは、倒れるまで働くだけだ。

 

そうブツブツ言いながらも、新居は快適だ。新しく、広い。嫁さんも子供も、機嫌がいい。風呂で足を伸ばせる。ネット環境も快適だ。何より夢だった自分の書斎もある。家庭菜園のできる裏庭もある。夢のマイホーム、最高だ。

 

 

少なく見積もっても私の数百倍テンション爆上がりの嫁さんは、無謀にも引越しの当日に早速義両親を召喚しようと試みた。引っ越しを手伝ってもらうつもりらしい。かつてお宮参りで揉めたとき、「大阪は遠いから絶対行かない」と言い放たれたことは忘れてない。けど、俺も大人だ、過去のことは水に流そう。引っ越しを手伝うという口実があった方が、お互い気を遣わないから、いいのかもしれないな。だけど、もう少し落ち着いてからにしないかい。ただでさえ引っ越し前夜は半徹夜。余計仕事が増えてしまう。ひと段落したら、心から歓迎いたしますよカッコ棒。

 

そう嫁さんに申し出ると、分かった、その代わりに引越し翌週の土曜にママ友家族を呼ぶ。ママ友にはそう伝えたから、それまでに家を片付け、当日はお前も対応せよ。対戦相手は、ほぼ初対面のママ友さんと愛らしいお子さん、そして初対面のコミュ障旦那さん(ママ友談)。そんな鬼指令を出す嫁さん。誰かを新居に呼ばないと死ぬ呪いでもかけられたのか。思わずそう勘ぐりたくなる。

 

当日はアルコールの力を借りなんとか楽しく乗り切ったが、急ピッチで新居の片付けを進めた代償として、俺の書斎だったはずの小部屋は、家中の段ボールが屋根まで積まれた倉庫へと変貌。唯一私がデザインを決めた書斎の壁紙も、見えなくなってしまった。日の当たらない裏庭は、家庭菜園どころか、蚊とセアカゴケグモが獲物を狙って徘徊している。おまけに通勤時間は長くなった。午前6時前に起き、嫁さん子供の寝顔をチラ見して、最寄り駅まで20分歩く。それから満員電車に揺られ、時間にルーズなバスに飛び乗る。呑気にチャリ通勤してた昔が懐かしい。

 

だけど、全然苦にならない。規則正しい毎日。薄暗い中家を出る時。満員電車に乗り込む時、これから戦場に向かう兵士のように、私のハートは高揚している。夜、ヘトヘトになり、コンビニでグリーンダヨを買い、1人飲みながら歩いて帰る時。住宅街、どこの誰かもわからない無数の家々を眺めながら、ああ、大多数のお父さんはローンを組んで頑張って仕事をしてるんだな、頑張ってるのは俺だけじゃないぞ、そして俺も、その戦うお父さん仲間入りを、遅ればせながら果たしたのかな。そうひとり悦にいる。

 

さあ、もうすぐ夢のマイホームに着くぞ。嫁さんがおいしいご飯を作って待ってくれている。息子は転びそうな勢いで、玄関を開けた俺に飛びつき、そして満面の笑みで歓喜の舞を踊る。その舞を見届け、味も分からないほど急いでご飯を頂いた後は、体力気力の限界まで、息子と遊ぶ。二階にできた広い子供部屋に、息子は私を連れていく。セリフを覚えてしまった絵本。360°どの角度からでも書けるようになったアンパンマン。電車。数字。積み木。ひとしきりルーティンをこなし、子供を寝かしつけながら、自らも力尽きる。ブログを書きたい、エロ動画を見たい。それらの欲求は睡魔にあっさりと負け、泥のように眠る。

 

夜の静寂を切り裂く、息子の夜泣き。あるいは不意に私の顔面を襲う、息子渾身の必殺寝返り踵落とし。何度か起こされ、目覚めるともう朝だ。

よし、今日も頑張るぞ。戦うぞ。これをあと数十年続けるというのか。上等だ、やってやるぜ。俺には家族がいる。戦う仲間もいる。それに素晴らしい友もいる。癒してくれる友もいる。負けてたまるかよ。やってやるよ。そんなやる気に満ち溢れている。

 

何よりもう、やるしかない。石にかじりついてでも、会社にしがみついて、働く。両手が千切れるまで、嫌な奴らにも笑顔でゴマをすりまくる。夢のマイホームにいる時間を削って仕事をし、出世して給料を上げ、定年はもちろん、再雇用の壁もブチ破り、文字通り最期の時まで、働くのだ。ぶっ倒れるのは、ステージ2以上のガンに侵されたときだと決めている。ローンが免除になるからだ。決めたのは私ではない。嫁と保険会社、それに銀行だ。ステージ1では足りない。ローンが半額しか免除にならないからだ。

 

そこに私の意思は、もはや存在しない。ただ、家族の幸せのために、嫁さんの笑顔のために、子供の未来のために。ローンを返し生活費を稼ぐために。雨の日も風の日も、粉骨砕身全身全霊、親父は必死で働くのだ。その背中に宿る哀愁は、やがて大人の男の色気へと昇華しモテ街道を驀進。いつしか彼は、宗右衛門町の星となり、齢39にしてナンバーワンホストへと駆け上がる。風俗王に俺はなる。などと意味不明な供述をしており、警察は薬物の使用および精神鑑定も視野に入れ、慎重に捜査を進める方針。

 

そして今日、疲労がたたったのか、ついに風邪を引いてしまった。心配どころか、子供にうつしたらどうするんだと病原菌扱いされ、二階の書斎に隔離される。かつては夢だった、今はただの倉庫と化したその場所。段ボールの隙間で眠ろうとするが、なかなか眠れない。閑静すぎる住宅街の弊害とも言うべきか、暴走族の蝿どもはいないが、静かすぎても落ち着かない。そもそも段ボールって、こんなに冷たかったっけ。

 

ふと自分の父親を思い出した。朝早くから夜遅くまで、ひたすら仕事。休日も家業の百姓仕事。怖くてほとんど話したことのなかった親父。仕事ばかりで子守をしないとオカンに酷評され、いつも愛犬を無言でじっと見つめ、絶対こんな風にはなるまいぞと誓ったその姿。その無言の大きな背中に、大人の男の哀愁と強さを垣間見ていた。親父は一体、何を心の支えに毎日頑張ってたんだろうか。俺もその領域に、近づけるだろうか。まだ小さい息子に、同じような背中を見せられるだろうか。そのためにも、泣き言を言ってる暇はない。くだらんブログを書いてる暇もない。そう思いながら、今日もまた下らない記事を生み出してしまいました。

今日はこれを聴いて眠り、明日への英気を養うことにします。


FUNKY MONKEY BABYS 「ヒーロー」

 

夢のマイホーム。いいものです。色々大変だったけど、建てて良かった。そろそろ寝ます。

スポンサードリンク