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ぞうブロ

サラリーマンエンジニア象の、本格エッセイという名の妄想寝言。

京都男ひとり旅1 阪急河原町駅で長渕を唄うおじさんと2人で乾杯を熱唱した夜。

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束の間の独身生活の締めくくりで、京都ひとり旅に来ました。

自分を見つめ直すため。男を磨くため。トキめく出会いを探すため。

 

大学時代、スカスカなようで濃密な時間を過ごした、京都の街。

行きつけだったラーメン屋さんがなくなってたけど、街並みは基本、あの頃と何も変わらない。

そう、あのおじさんも。

 

 

阪急河原町駅。

飲み屋街の木屋町通りと、メインストリートの四条通りがぶつかり、ひっきりなしに人が往来する。

そんな場所の、駅の入り口に、あのおじさんはいた。

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学生時代。全てが分かったようで、何も分かってなかった、ほろ苦くも懐かしいあの時。

サークルの飲み会帰り。デートのとき。

大学院を辞め、途方に暮れ、街を彷徨ってたとき。

おじさんはいつも、同じ場所で、同じ長渕を、歌っていた。

当時から上手くて、そして長渕剛さんに似ていた。

 

足を止める人は、ほとんどいなかった気がする。

たまに酔っ払った薄汚いおっさんおばさんが、一緒に乾杯を歌ってたっけ。

学生の私には、何か新興宗教みたいで、異様な光景に思えた。

大人って大変だと思った。

 

あれから15年。

ふらっと1人で訪れた、京都。

街を歩き回っても、懐かしい気持ちとともに、切なく苦い思い出も蘇る。

昔のように、飲み会や麻雀をして馬鹿話で盛り上がれる友達は、もうそこにはいない。

あの頃はもう、戻ってこない。

 

そんな中、阪急河原町駅の、まったく同じ場所に、おじさんはいた。

そして、あの頃と同じく、ほとんど誰も立ち止まらない中、ずっと長渕を歌っていた。

おじさんの姿、歌声、ギターとハーモニカの音色も、当時のままだった。

 

私は思わず、立ち止まった。

 

そして、携帯をいじるふりをしながら、遠巻きに、じっとおじさんの長渕を聴いていた。

 

気づくと数十分が経っていた。そしてようやく分かった。

学生のとき見た、あの泥酔した薄汚いおっさんおばさんは、今の自分と同じだったんだ。

 

おじさんの無骨で優しい歌声と、長渕の名曲たちが、私のハートを揺さぶった。

 

私は人目を気にしつつ、そっとおじさんに近づこうとした。

 

すると、夜のお仕事風の綺麗なお姉さまが、おじさんに声をかけた。

おじさんは、気恥ずかしそうに、笑っていた。

お姉さまは、「またウチの店に来てね!歌聴かせてね!」

みたいなことを言い、去っていった。

彼女を見送るおじさんの顔が、心なしか切なそうに映った。

 

そしておじさんは、何かを振り払うように、より力強く、長渕を歌い始めた。

曲名は分からないが、「口に出しちゃいけない事だろう、、」を連呼していた。

 

ああ、もう我慢できない。

さらに10分が経ち、私はおじさんに近づいた。

そして、曲の合間、勇気を振り絞って、声をかけた。

 

感動しました。ずっと昔から、長渕を歌ってらっしゃいますよね?

 

おじさんは、びっくりするほど気さくに、マイク越しにマシンガントークをしてくれた。

おじさんの本職は、会社の経営者。

なんとここで34年もずっと、長渕を歌い続けてるらしい。

「同じ場所で同じアーティストを歌い続けるギネス記録」を持ってるとか。

さらに、長渕剛さん本人とも親交があり、ライブに招待してもらったり、家にまでお招きされたらしい。

凄い、凄すぎるぞ、このおじさん。

 

機材とか歌い方を教えてくれたあと、おじさんは「何かしよか?」と言ってくれた。

そして、私の大好きな「乾杯」を歌ってくれた。

 

気づけば39歳の私は、50歳のおじさんと2人、通り過ぎる人混みを気にもせず、乾杯を熱唱していた。

君に、幸せ、あれ。

正直、涙が出そうなくらい感動した。

あの頃と全く同じ、いやそれ以上に進化した、「乾杯」だった。

 

「応援されるとやりにくくなるわ」と照れながら、おじさんは最後にツーショットを撮ってくれた。

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そして握手をしてくれた。

ギターをかき鳴らしたおじさんの右手は、とても温かかった。

 

そうそう、おじさんは長渕の素晴らしい歌とともに、もうひとつ、名言を私にくれた。

 

「50やけど全然老けてないやろ?ちょっと恥ずかしいねんけどな。

まあ、ずっと好きなことしかしてこなかったから、老けないんやろうな」

 

最高のトキメキと、ひとり旅の思い出をありがとう、長渕おじさん。

またいつか、その声とトークを、聴かせて下さい。

密かに応援しています。

 

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