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ぞうブロ~ぞうべいのたわごと

迷いながらも前に進む、不惑のサラリーマンのブログ

同僚がメンタルをやられてしまった。

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同僚マックスがメンタルをやられた。転職の同期で、私と同じくFFとジブリが好きだという彼は、良くも悪くも、優秀な設計者。緻密で隙のない完璧主義の性格は、まさに設計の申し子。

一方で、理不尽や無駄、曲がったことが許せず、周囲との軋轢や葛藤もあった模様。しかし、どんなに忙しくても、周りがしんどい辛いと愚痴をこぼしても、「僕は絶対鬱なんかにはなりません!鋼のメンタルですから」と豪語していた。

そんな彼が、まさか。いや、そんな彼だからこそ、なのかもしれない。

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 https://mbp-japan.com/jijico/articles/18913/

 

ちなみにマックスは無趣味だった。頭がいいので、話を何でも合わせてくれるが、一切隙を見せない。酒も女も受け付けないが、職場の飲み会では事あるごとに「ゾウベイさんのことは何でも知ってますよ!家族構成は・・・実家の住所は・・・」などと、私の個人情報を売り、私を盾にするのが通例だった。そして「ゾウベイさんは心の友です!」と、真っ黒な瞳を真っ黒に光らせ満面の笑顔で言い放ち、周囲を凍り付かせるのだった。

 

身も心も理論武装したその姿に、私は壊れかけの機械のような危うさを感じていた。そして昇進して間もなく、彼は壊れてしまった。心を頑なに守っていた鎧は剥がれ、潤滑油は尽き、心のギヤが焼き付き、動かなくなってしまった。

 

数か月の長期休養明け。最近慣らしで職場復帰したマックスは、別人のようにやつれていた。なんて声をかけようか。

遠い昔、自分も抑鬱病を患ったことがある。そのときの気持ちを思い出してみた。何をされると嫌だったか。嬉しかったか。スルーするのも良くないが、気遣われるのも嫌だろう。まずは普段通り接しよう。

 

「おっ!生きてましたか!」なんて声をかけると、消え入りそうな声が返ってきた。そしてぽつりと「ロープの結び方が完璧になりました」。ブラックジョークなのか、そんな物騒な言葉が返ってきて、苦笑いするしかなかった。他称「心の友」として、一体、どんな言葉を彼にかければよいのだろうか。

 

完璧主義で、プライドの高い彼のことだ。メンタルが原因で離脱した自分自身を許せないのだろう。腫れ物に触るような扱いは、さぞ屈辱的だろう。かといって、知ったかぶりで説教されるのは、もっと嫌に違いない。しかし「心の友」(他称)として、メンタルで苦い経験を持つ身として、そんな水臭いことはできない。

彼と二人の昼食時。顔色が悪く、下を向いて飯を食べる彼が、ぽつりぽつりと話し始めた。

 

「…最初の数週間は、本当に悲惨でした。一日20時間ほど寝てました」

「大変でしたね…それは、身体と心が休めって言ってたんですよ。マックスさんも機械じゃなくて人間やったってことですよ」

「…一ヶ月分の睡眠薬を渡された時、まとめて飲んでしまいたい衝動に駆られたんです」

「…でも、マックスさんは、飲まなかった。それで今、会社に来てる。それだけで、勝ちですよ。私は昔、それで大学院を辞めちゃいましたからね。情けなくて惨めで、私こそ本当に死のうと思いましたよ。大学の先生や親が下宿に来て、危うく警察沙汰になってね、ハハハ…」

「…そうなんですか…」

「…それで、先輩が、『死ぬ前に大学院辞めろ』って言ってくれたんですよ」

彼は顔を上げた。話せそうだ。

「…死にたくなる気持ち、分かります…よく立ち直りましたね…」

「やっぱり卒業旅行、いや中退旅行で、タイに行ったおかげですね。あのとき出会ったいとしのジラパちゃん、元気にしてるかな」

「…あれから感覚が、元に戻ってこないんです。もっと自分はやれてたはずなのに」

「そうですよね…まあ『元に戻す』と思うと、なかなかしんどいですよね。『作り直す』と考えたら楽になるかもですよ」

「『作り直す』か…そうですね…ゾウベイさんもですか?」

「はい。私も病気をしてから偏頭痛持ちになってしまって、元には戻らなかった。散々落ち込んで、絶望もしましたけど。筋肉みたいに、元通りよりも、作り直した方が強くなるし」

「…もう、取り返せないんですかね」

「『過去の事実は変えられないけど、今と未来を頑張れば、過去の意味は変えられる』って言葉がありますよ」

そう言った時、彼は黒い瞳をより大きく見開き、私を見た。心なしか目が潤んでいるようだった。かつて私も救われた、X JAPANのYOSHIKIさんの言葉。

「…いい言葉を聞きました」

「すみません、分かったようなことを言って。私とマックスさんでは、全然状況も違うのに」

「いえ…ありがとうございます」

そう言って、彼は去っていった。込み入った話をしたのは、そのときだけだ。自分が抑鬱病で苦しんでいたとき、中退して暗闇の中にいたとき。荒んだ心を救ってくれた大切な言葉たちを、彼に伝えた。そのつもりだった。

 

同時に、ふと思った。私のしたことは、正しかったのだろうか。鬱病の先輩ズラして、偉そうに体験話を披瀝する。余計なお世話というか、弱っている友達を踏み台にした単なる自己満足なんじゃないか。彼を余計追い詰めることには、ならないだろうか。そんなことを考えると、自分も気持ちが落ち込んでくることがあった。

ギャグじゃなく、鬱はうつるんだと思った。でも、そんな気持ちも一瞬だった。少しでも伝わってくれてればいいな。

 

あれから、マックスは、踏ん張っている。

「あの経験のおかげで、一回り人間として大きくなれたな。同じような傷を持つ人に寄り添い、励ませるようになったな。」

そんなふうに、いつかこの経験も無駄じゃなかったと笑える日が来るよ。というかそう思おう。時間がかかっても、無理やりにでも、そう思うしかないんだ。しゃーない、なるようになるよ。死ぬわけじゃない。家族もいるし、家のローンもあるけど、生きてりゃ何とかなるbyもののけ姫のおときさん。そしてまた一杯やろう。私を盾にするのは勘弁な。

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